その「頑張って」、ちゃんと届いてる?|ことばのクスリ No.02

「頑張って」

誰かを応援したい時、自然に出てくる言葉です。

私も、これまで何度も使ってきました。

試験を受ける人に。
何か新しいことを始める人に。
仕事や子育てで踏ん張っている人に。

「頑張ってね」

そこには、

「応援しているよ」
「うまくいくといいね」

そんな気持ちがあります。

だから私は、「頑張って」という言葉を悪い言葉だとは思っていません。

ただ、自分の子育てを振り返ると、
「頑張って」
と言われることが、しんどい時もありました。

目次

頑張れば何とかなること、ならないこと

子育てをしていると、自分がどれだけ頑張っても、思った通りにならないことがあります。

相手がいるからです。

自分一人で完結することなら、

「もう少しやってみよう」
「やり方を変えてみよう」

と、自分の努力で動かせることもあります。

でも、子どもには子どもの考えがあり、気持ちがあります。

こちらがどれだけ、

「こうしたほうがいい」
「こうなってほしい」

と思っていても、相手がその通りに動くとは限りません。

そんな時に、

「頑張って」と言われると、
「いや~、私、もう頑張ってるんだけどな」
と思う自分がいました。

それでもうまくいかないと、

「娘がこうだから」
「息子がこうだから」

と、相手のせいにしたくなる。

その一方で、

「なんで私はできないんだろう」
「私のやり方が悪いんだろうか」

と、自分を責めることもありました。

そうすると、

「もっとやらなきゃ」
「もっともっと頑張らなきゃ」

となっていく。

そして、いつの間にか、

「頑張らなきゃ」が、
「認めてもらいたい」

という気持ちに変わっていくことがありました。

「頑張って」が重くなる時

たぶん、「頑張って」という言葉が苦しくなるのは、言葉そのものが悪いからではないのだと思います。

もう十分頑張っているのに、
「もっと頑張って」
と受け取ってしまう時。

自分ではどうにもできないことまで、
「あなたが頑張れば何とかなる」
と言われているように感じる時。

そういう時には、応援の言葉だったはずの「頑張って」が、少し重くなることがあります。

一方で、

「明日、試験なんだ」
「新しい仕事、ちょっと緊張するな」

そんな時に、
「頑張ってね」と言ってもらうと、
「よし、やってみよう」
と思えることもあります。

私にもあります。

同じ「頑張って」なのに、なぜこんなに届き方が違うのだろう。

そこを考えていくと、やっぱり、言葉だけを見ても答えは出ない気がします。

その人は、今どこにいるのだろう

「頑張って」と言う前に、少しだけ考えてみる。

その人は今、これから頑張ろうとしているところなのか。
それとも、もう十分頑張ってきたところなのか。
もう一歩、背中を押してほしいのか。

それとも、
「もう十分やったよ」
と言ってほしいのか。

もちろん、こちらに全部わかるわけではありません。
正解の声かけがあるとも思いません。

「頑張って」がいい日もある。
「応援してるよ」がいい日もある。
「無理しすぎないでね」がいい日もある。
そして、何も言わずに話を聞くほうがいい日もあると思います。

大切なのは、

「頑張ってと言ってはいけない」
と新しいルールを作ることではなく、

目の前の人に、今どんな言葉が届くだろう
と考えることなのだと思います。

私自身も、まだ考えている途中です

ここまで書いておきながら、私自身も今でも普通に、
「頑張って」
と言います。

これからも、きっと言うと思います。

だから、

「私はもう言葉を間違えません」
という話ではありません。

後になって、
「あの言い方でよかったかな」
と思うこともあります。

もう少し話を聞けばよかった。
別の言葉があったかもしれない。

そんなふうに振り返ることもあります。

でも、それでいいのかもしれません。

言葉を選ぶことは、一度正解を覚えて終わることではなく、その人との関係の中で考え続けることなのだと思います。

ことばを届ける前に、人を見る

No.01の「大丈夫」を書いた時、私は、

ことばを届ける前に、人を見る

というところにたどり着きました。

「頑張って」について考えても、やっぱり同じところに戻ってきました。

「大丈夫」がいい言葉か、悪い言葉か。
「頑張って」がいい言葉か、悪い言葉か。

それだけを考えていても、たぶん答えは出ません。

そのことばの向こうには、必ず人がいるからです。

その人が今どんな状態なのか。
何を抱えているのか。
どれくらい頑張ってきたのか。

そこを少しだけ見る。

そして、
「この人に、今、このことばはどう届くだろう」
と考えてみる。

これからも私は、そんなふうにことばと向き合っていきたいと思います。

あなたが誰かからもらった「頑張って」が、うれしかったのはどんな時でしたか。

そして逆に、
「もう十分頑張ってるよ」
と思ったことはあったでしょうか。

少しだけ、思い出してみてもらえたらうれしいです。

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