「大丈夫」が、クスリになる時・毒になる時|ことばのクスリ No.01

「大丈夫」という言葉に、救われたことがあります。

子育てや家族のことで悩み、自分自身もかなり落ち込んでいた時期。

それまで抱えてきたことを、ある人に話しました。

うまく整理して話せたわけではありません。

何に悩んできたのか。
どんな気持ちでここまで来たのか。

その人は、私の話を聞いたあとで、

「大丈夫」

と言ってくれました。

その一言に、私はとても救われました。

でも、「大丈夫」という言葉なら、いつでも人を安心させられるのでしょうか。

私は、そうではないと思っています。

目次

同じ「大丈夫」でも、届き方は違う

「大丈夫だよ」
「きっと何とかなるよ」

誰かを安心させたくて、私たちはよくこんな言葉を使います。

私自身も、子どもたちに何度も言ってきました。

もちろん、苦しませたいわけではありません。

安心してほしい。
元気になってほしい。

そんな思いから出てくる「大丈夫」です。

けれど、本人が

「しんどい」
「大丈夫じゃない」
「できないかもしれない」

と思っている時に、先に「大丈夫」と言われたらどうでしょう。

もしかすると、

「大丈夫にならなくちゃ」
「心配をかけちゃいけない」

と感じることもあるかもしれません。

善意から出た言葉だから、必ずそのまま相手に届くとは限らない。

ことばは、「何と言ったか」だけではなく、「相手にどう届いたか」まで見ていく必要があるのだと思います。

窓辺で本を手に考える女性のイメージ

「大丈夫」と言ったから、大丈夫とは限らない

もうひとつ、忘れずにいたいことがあります。

「大丈夫?」

と聞かれて、本当は大丈夫ではないのに、

「うん、大丈夫」

と答えてしまうことです。

私にもあります。

だから、「大丈夫って言ったから、大丈夫なんだ」とは限りません。

表情や声、いつもとの違い。

その人との普段の関係。

ことばだけでは見えないものが、その奥に隠れていることもあります。

「大丈夫」を言う前に

では、苦しんでいる人を前にした時、何と言えばいいのでしょう。

今の私なら、すぐに

「大丈夫だよ」

とは言わず、

「きつかったら、きついって言っていいよ」
「今は話したくなかったら、無理に話さなくてもいいよ」
「一人で抱えきれなくなったら、一緒に考えよう」

そんな言葉を届けたいと思います。

大切なのは、「大丈夫」という一言で相手の苦しさを消そうとすることではなく、大丈夫ではない時にも、その人のそばにいられることなのかもしれません。

ことばを届ける前に、人を見る

私は、「大丈夫」という言葉を悪い言葉だとは思っていません。

むしろ私は、その言葉に何度も救われてきました。

だからこそ、安易には使いたくないと思っています。

私を救ってくれた「大丈夫」は、私の苦しさをなかったことにする言葉ではありませんでした。

話を聞いてもらったあとに届いた、

「あなたは十分やってきたよ」
「もう全部を背負わなくてもいいよ」

そんな意味を含んだ「大丈夫」でした。

「大丈夫」は、苦しさを消すための言葉ではなく、苦しさを受け止めたあとに届けることで、初めて「ことばのクスリ」になることがある。

励ます言葉を探す前に、まず、その人の「今」を見る。

ことばを届ける前に、人を見る。

これから「ことばのクスリ」を届けていく中で、私が大切にしていきたいことのひとつです。

あなたが誰かの「大丈夫」に救われたのは、どんな時でしたか。

そして最後に誰かへ「大丈夫」と伝えた時、そこにはどんな思いがあったでしょうか。

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